「眼科のひと」です

「眼科のひと」が眼科のアレコレについて解説します

視野検査の目的

視野検査とは?

 

視野検査とは文字通り、片眼ずつの視野(見える範囲)が正常かどうか調べるための検査です。

まあるいドームのようなところに顔をのせて、ランダムに光る光を感知したらボタンをぽち、ぽち、と押していく検査です。

視野に異常・欠けなどがあると、それば『緑内障』という病気につながっていきます。(頭蓋内病変があるときにも視野異常は出ますが、ひとまず今回それは関係なしとします)

 

ただ視野検査を定期的に行っているにもかかわらず、自分が緑内障である・または緑内障の予備軍であるということを知らない人も驚くほどたくさんいらっしゃいます。

医師が視野検査の結果をみて「はい、大丈夫ですね」だけで済ませてしまうパターンが非常に多いのだと思います。

 

ご自身はもちろん、ご家族も視野検査を定期的にやってらっしゃる方がいたら、何の目的でやっているのか知ったうえで、今後の検査結果に関心をもっていただきたいと思います。

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こういうやつです

 

緑内障』っぽい人は視野検査から

 

「次回念のため視野検査をやってみましょう」

ものもらい・結膜炎・花粉症などで眼科に行ったとき上記のことを言われたことはありませんか?

もしくは、人間ドックで『視神経乳頭陥凹拡大』と指摘され眼科に行くと、このように言われるかと思います。

つまりは「『緑内障』の気がありそうなので、ちゃんと調べてみましょう」ということです。

 

どうやって緑内障っぽいか?と判断しているのかというと、眼底カメラを撮ったり、医師が眼底を診て(右手でピカッと光を照らす黒い棒を持ち、左手で丸い虫メガネのレンズみたいなのを持って目の近くにあてがう、あの眩しいやつです)その結果『視神経乳頭』という部分のへこみが大きいかどうかで判断します。

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視神経乳頭

『視神経乳頭』は誰でもへこんでいるのですが、このへこみの割合が大きめだと緑内障の気がありそうだぞ、と判断します。(緑内障だとへこみがどんどん大きくなっていきます)

この段階ではまだあくまで疑っているだけで、緑内障だ!と確定診断はできません。

『視野検査』をやってみてはじめて緑内障かどうかを判断することができます。

 

 

視野検査の目的

 

私たちは普段、両眼でものを見ています。もし仮に、片眼の視野・視界に異常があっても反対の眼が補ってしまったり、脳が勝手に画像を補完してしまったりして異常に気付くことはほぼできません。

片眼ずつ遮蔽(目隠し)をして、検査をすることで右眼・左眼の状態がはじめて浮き彫りになります。

検査をしてみた結果、欠けはまったくありませんでした~となれば、まだ緑内障は発症していないことになりますし、欠けが出てきていると緑内障の治療を開始することになります。

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検査結果はこんな感じです

 

光の感度を表しており、「■」(完全に見えてない)<「姑」みたいなの(あんまり見えてない)<「: :」(ちょっといまいち)となっていきます。「・」は何ともない部分です。

 

ただ、今回欠けがなくても例えば…

・OCTという画像検査で、網膜の厚みが薄いと言われた

・そこそこ強い近視がある(近視の人は緑内障罹患率が高いです)

・視神経乳頭のへこみがかなり大きめ     …etc

など、「将来的に緑内障になりそう~!」という因子がある方は半年に一度や1年に一度の定期的な視野検査をおすすめされる(もしくは特に説明がなくてもそのように指示される)パターンが多いかと思います。

 

すでに『緑内障』と診断されている方は、進行していないかどうかのチェックが目的です。

視野の欠けが前回の検査よりも広がってしまっていた場合、緑内障が進行していると考えて点眼薬の種類を増やしたり、変更したりする場合があります。

緑内障による視野の欠損は急激に進行するものではないので、初期の段階だと3、4か月に一回ペース、病状が落ち着いていれば半年に一回ペースくらいで行っていくのが通常です。

 

 

そもそも緑内障とはどんな病気か?

次回お話したいと思います。

 

読んでいただきありがとうございました。

 

眼科の人です

はじめまして、「眼科の人」です。

 

某眼科クリニックで、先生の横に立ち「診察助手」をしています。

私は医師ではありませんので、診断をすることや特別な医療行為は何もしておりません。

主な仕事としては、患者さんの呼び出しと誘導・写真撮影や器具出しの補助・処方する目薬の説明・疾患の説明などをしています。

内科クリニックだと看護師さんが横に立っていたり、大きい病院だとシュライバーと呼ばれるカルテ入力を専門にする人がいたりしますが、眼科クリニックでこのスタイルは珍しいかと思います。

日々の自分の業務を通して、より広くいろんな方に眼科について知ってほしいと思い、ブログを立ち上げました。

 

ワタシって何の病気だったの??

 

これまで「眼科の人」をやってきて最も意義があると感じていることが「患者さんに、ご自分がどのような病気なのか、その病気とはどういうものなのか?病気への理解(病識)をしっかり持ってもらうこと」だと思っています。

 

「前の眼科では特に何とは言われず薬だけ出された」

「同じ検査は前からやっていたが、この病気だとは聞いてなかった」

「同じような症状はよく出るけど、何が原因かは知らなかった」

 

このようにお話ししている患者さんがとても多いことに驚きました。

せっかく病院へ行ったのに、自分が何の病気なのかもよくわからず終わっているかたがとても多いのです!

特に、長年ずっと通院していたのにはっきりと何の病気か聞かされておらず、言われるがまま通院し、検査し、薬を使っていた患者さん(特に高齢の方が多いです)が、私の勤務先クリニックへ来て診断を聞き

「えっ!私って〇〇なんですか?!」

とショックを受けるパターンもよくあります。

 

 「大事なことなので2度言います」の効果

 

眼科では、まず検査→先生が直接診察(眼科では必ず視力検査・眼圧検査をはじめにやります)という流れです。先生が診察や検査の結果を患者さんへお話しし、お薬などを決め、今後の治療方針を伝えます。

先生はいろんなデータをふまえ、考察しながらお話ししていくので、なかなかじっくりと丁寧なお話しをすることは難しいと思います。ましてや、カルテの作成もしゃべりながらしなくてはならないので、どうしてもさささ~っとしたものになってしまいます。

(丁寧なお話しをしてくれるクリニックは、時間がかかるので激混みですよね…)

 

先生がひととおりの診断をし、カルテを作成している間に私が

「そもそも〇〇というのはこういう病気ですよ」とか、検査データや患者さんご自身の写真を改めて見せながら「ここがこうなっています」「この検査結果からこのようなことがわかります」などと補足説明をしています。

要は先生がさささ~っと話した内容を、できるだけ噛み砕いてわかりやすくもう一度言っているだけです。

 

ただ、この2度目の説明がより患者さんの「病識」を深めることに確実につながっていると実感しています。

 

患者さんと病院双方の利益になる 

 

もともと、診察助手というポジションの目的は

「円滑な患者さんの誘導&先生がスムーズに診察する手助け=診察時間の短縮」

でしたが、新規開院のクリニックだったため最初は思うように患者さんの数が伸びず、リピーターを増やすための工夫として私が独自に補足説明や解説をし始めました。

 

効果として、患者さんには「わかりやすい」「今までよくわからずに他の眼科に通院してたけど、初めて自分の病気が何なのか知った」という声をいただけるのはもちろんですが

一回きりの受診で終わらない

自己判断で治療を中断しない

しっかり治療や進行予防の意識を持って薬を使う

という患者さんが増えてくれることにより、クリニックにとってはリピーターの獲得にもつながり、良い循環が生まれました。

 

もっと広く、いろんな人に病識をもって欲しい

「病院で〇〇って言われたけど、よくわかんない」

「眼科でこんな検査やったけど、どういう意味だったの?」

このような患者さん、実はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

特に眼科の病名は一般的になじみのないものが多いと思います。

 

そんな方々に少しでもお役に立てればと思います。